「紅い薔薇の追憶」第4章

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「ねえ、マサミチさん、あなた30歳を目前にして、まさかこんな目に遭うとは、夢にも思わなかったでしょうね…」

義母、志津絵の凍るような目線が、僕の全身をつらぬいた。

「わたしたち、あなたが帰ってくるのを、ほんとうに、楽しみにしていたのよ。ゆみちゃんから、帰省の連絡があったときは、正直、小躍りした」

あかね流先代の娘、ヒカコが義母にならんだ。

茜ヒカコ。嫌な女だ。若いころから男嫌いのミサンドリストであることを標榜し、生涯独身をつらぬいた。そのくせ、妙にべたべたしたところがあった。たぶん僕が小6くらいの時だと思うが、夕刻、一人で風呂に入っていると、なぜかヒカコが現れ、「背中を流してあげる」と言った。彼女は着衣を脱ぎ捨てて、パンティとブラジャー姿になった。黒々としたアンダーヘアーが透けて見えた。恐怖で動けなくなった僕は、彼女に腕をつかまれ、湯舟から出され、両手を伸ばした格好で立たされたまま、全身を泡だらけにされて、洗われたのだった。彼女の指が、からだの隅々を這いまわり、お尻の穴にまで侵襲しようとしてくる感触が今でも忘れられない。

「大学の学費、わたしが出してあげたのよ。あなた、知ってるでしょう。それなのに、お礼の一言もないの?真っ先に、わたしの元に挨拶しに来るかと思っていたけど…」

ヒカコが僕の胸に指をはわせた。鳥肌が立った。

「…ま、いいわ。あなたの気持ちは、よーくわかりました。5年分の学費と、仕送り金。利息も含めて、ちょうと1200万円になるから。顧問弁護士の前で、サインしてもらいますからね。全部返し終わるまで、あなたに選択権はないと思っていいわね」

ヒカコが生臭い息をはきかけた。もう一つ、思い出した。ヒカコは、風呂の一件以来、しばしば僕の寝室に夜這いするようになった。当時は、妹の綾が隣に寝ていたはずだが、彼女がどうしていたか記憶にない。ヒカコは僕に添い寝をすることを強いた。添い寝をしながら、僕のパンツを脱がし、もてあそんだのだった。

いつのまにか、空が黒い雲におおわれていた。月が陰ると、かがり火の炎が、赤い薔薇の庭の中心になった。

きつく絞められた革ベルトが、両手首の血流を阻害していた。僕は一瞬、立ちくらみを覚えた。過去においては、折檻の最中に気を失うことがあった。その場合、ひとまず制裁は中断され、翌日以降に持ち越しになるのが常だった。だが、気を失うまでが長いのである。

「“戒め筒”を用意してください」

志津絵がハウスキーパーたちに命じた。若い海堀心華が、ジュラルミンケースから慎重に道具を取り出した。

「ああ、それは“戒めリング”の方ね。“戒め筒”は、こっちよ」

西島蓮が、正しい器具を選び直した。それは、継ぎ目のない円筒であり、なめらかにくぼんでいた。鈍く光る銀色の硬質合金。筒の表面には、宗家の権威と冷たい美意識を象徴する薔薇のレリーフが刻まれていた。

あかね流では男子が18歳になると、親族女性たちの手による“儀式”が行われることは前に述べた。その際に、成人した男子に送られるのが“戒め筒”である。その形状は、円筒を基本とすること以外は様々であり、対象男子のプライベートゾーンをわずかに圧迫し、逃げ場がないと感じさせるよう、ジャストフィットするように設計されていた。ただし、これは実際に使用されるものではなく、女性支配の象徴ともいえる器具だった。

しかし、義母は“戒め筒”を受け取ると、それを装着しようとした。

「本来なら、10年前に、試さなければいけなかったのよ。…今さら、サイズが合うかどうか…」

「大丈夫。ママ、ぴったりよ。私が言ったでしょ。マサミチさんのサイズは、これくらいだって」

志穂が笑った。高校生の志央里と、中学生の沙梨菜が軽蔑的な目で僕を見つめていた。

“戒め筒”は、きつすぎず、緩すぎない大きさであり、装着時に、僕を完全に包み込み、先端からわずかに突き出る程度の長さだった。

「やめてくれ…」

僕は、両方の脚をよじって、下半身だけ逃げようとした。もちろん無駄な努力であり、志穂の命令で、2人の娘たちに取り押さえられた。

「ほら、叔父さん、なに逃げようとしてるのよ。しゃんとして!まっすぐ立ちなさいよ」

14歳の沙梨菜は笑いながら、僕の尻を平手で叩いた。

志穂と、志央里。それにハウスキーパーの海堀心華、西島蓮の2人が、両足にからみつくように、押さえた。

“戒め筒”を装着するためには、剃毛したうえで、亀頭を露出させなければならない。

妹の綾が、準備していた。彼女はシェーバーオイルをたっぷりと手に乗せ、委縮した性器を包み込んだ。

「綾…やめてくれ…」

「動かないで。お兄ちゃんが悪いのよ。本来なら、10年前にしなければならなかったのよ。お母様に無断で家を出るから、こういうことになるの」

綾は、先端部分をつまみ、物理的限界まで引きのばした。すぐに剃毛せず、娘の結菜に剃刀を預けたまま、僕のデリケートな部分をもてあそんだ。言うまでもなく、女たち全員が、その様子を見守っている。

「お兄ちゃん、どうしよう…剥けない」

女たちがどっと笑った。

妹の綾

「綾。貸してごらん」

志穂が綾を押しのけるようにして、僕の正面にしゃがんだ。

「マサミチ、あんた、ちょっとクサイよ。ちゃんと皮を剥いて、洗ってる?!」

わざと頓狂な声をあげて、さらに女たちの笑いを誘う。

「なになに?剥けないの?」

従姉のノリコが、その娘芽衣をともなって、志穂の背後からのぞき込んだ。

「うーん、これは」

ノリコが手を伸ばしてきた。

「かなり重症では。オチンチンの皮が、分厚すぎて、亀頭が露出できません」

いやーー! ひゃあ!! ひぃっ! うげぇ!! 女たちが各種悲鳴を上げる。

「どれ、わたしに貸してごらん」

叔母の理絵子が、両手にたっぷりとローションを乗せて、参戦する。彼女は、両手の平で僕を押し包んだ。

「あはは!ずいぶん、小っちゃいわねえ。どうした?マサミチ。あんた、こんなもんだっけ?」

「女に囲まれて委縮しちゃったかな?」

鳥羽ゆみが、幼い娘の茉優花とともに加わった。

「ほら、見てごらんなさい。皮が垂れ下がっているでしょう。これだと、オシッコがひっかかるから不潔なのよ」

「えーわたし、分かりません」

茉優花は両手で顔を覆って、後方へ逃げてしまった。

茉優花
幼馴染の鳥羽ゆみ

つづく

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