夏樹沙耶が俺の身体に巻きつけられたロープを引きよせ、俺を女子更衣室の中央に立ち上がらせた。
そのまわりを、深谷美雪、西原エリカ、澤井みつほ、今瀬梨津子、山口あゆみ、そして母親三人衆の澄田美和、大崎裕美子、浜名紀子が取り囲む。
更衣室の天井付近には、コンクリートでできた太い梁があった。
夏樹沙耶は、ロープを梁へ通すと、下へ向けて力いっぱい引っ張った。
「あ、いててて・・・、痛い痛い!」
からだの大きい山口あゆみが、ロープの先端を、ベンチの脚にくくりつけた。
宙吊りとまではいかないが、俺は両手を背中に縛られた状態で、ぴんと一本張ったロープに吊るされてしまった。
背の高い山口あゆみが、俺の正面に立ち、小気味よさげに眺めた。
「文字通り、吊るし上げ完了ね。このあとは、どうするつもりなの?」
夏樹沙耶は近くのベンチに腰を下ろし、
「フフ・・・こうなったら生かすも殺すも思いのままなんだから、ここにいるみんなで決めればいいんじゃない」
そう言って煙草に火をつけた。
「今日は、“被害者の会”だから、早い者勝ちだよ」
「あんまり殴ったり蹴ったりして、怪我させるのはまずいんでしょ?」
山口あゆみが、物騒なことを言った。彼女は、スポーツウェアみたいな動きやすい格好をしていた。
「そうしたければ、いいんじゃない?」
夏樹沙耶が言った。彼女は煙草の火を俺の顔に近づけて、
「ここなら、多少の物音や、叫び声なんて、聞こえないわよ」
「助けてくれ!」
俺はほとんど悲鳴に近い声を出した。
「許してくれ・・・俺が悪かった。この縄をほどいてくれ」
山口あゆみは苦笑しながら、
「ちっとも反省してるように見えないわ」
そう言って、彼女は小手調べとばかりに、平手で俺の頬を叩いた。
「勘弁してくれ・・・」
「だから、反省してるように見えないって」
言いながら、さらにビンタをあびせかける。
「・・・お前たち、俺にこんなことをして、どうなるか分かってるはずだ」
山口あゆみを睨みつけ、俺は言った。
「あとで、理事長に言いつけてやるぞ!」
「ほーらね。ちっとも、反省なんて、してないんだわ」
そう言って、山口あゆみが、また俺の頬を叩いた。
「お前たち全員、学園にいられなくしてやるからな!」
天井から吊り下げられた身体をゆらし、噛みつかんばかりの勢いで、俺は山口あゆみに言った。
「お前の子供もだぞ。わかってるのか!!」
「おい、美雪、みつほ、お前たち覚悟しておけよ!二人ともクビだ。再就職だってできないようにしてやるぞ。 ざまあみろ・・・わっはっはっは!!それが嫌なら、縄をほどけ。今すぐにだ!!」
ここぞとばかり、俺は吠えまくった。
「それだけじゃない、それだけじゃないぞ!知り合いの弁護士と、警察幹部に訴えて、お前たち全員、逮捕してやる。いいか、俺の力を見くびるなよ!!」
「なによ!わたしたちに挑戦しようっていうの!?」
子供の退学を持ち出されると、山口あゆみが少しひるんで、夏樹沙耶と交代した。
夏樹沙耶は、少しの間、憎々しげに俺の顔を眺め、たばこをふかしていたが、やがて静かに口を開いた。
「言いたいことはそれだけ?」
「オレは、教師なんかいつやめてもよかったんだ。将来は、聖泉女学園を継ぐ男なんだからな!」
「それは、あなたの力じゃなくて、お母様の力でしょ」
深谷美雪が言った。侮蔑と、哀れみがまじったような目をしていた。
「・・・・オレが理事になったら、お前はまっ先に懲戒解雇だ。俺をだましてこんな目にあわせたんだから、当然だ」
「あなたは、理事にはなれないわ」
「お前になにが分かる」
「わかってないのは、あなたの方。お母様は、あなたが思っているほど、あまい人ではないわ」
それだけ言うと、深谷美雪は、他の女たちの後ろに引っ込んでしまった。
「おい、待てよ!ミユキ!!いつからそんな生意気な口をきくようになったんだ!・・・・待てって言ってるだろ!!」
深谷美雪が背中を向けて更衣室を出ようとしたので、俺は思わず叫んだ。
「覚えてろ!!俺に逆らったら、後でレイプだからな!みつほだって分かってるだろ!二人ともやってやるから、覚悟しておけよ」
「やれやれ、情けない男だわね」
女医の今瀬梨津子が手で「早く行きなさい」と合図をして、深谷美雪を部屋から退出させた。
深谷美雪は、同僚の澤井みつほと小さく言葉を交わすと、うなずいて出て行った。
「この男が言ったことは本当なの?」 夏樹沙耶が、残された澤井みつほにたずねた。
澤井みつほは、じっと下を向いて答えず。
「本当の話なのね」
夏樹沙耶が、怒りに燃えた目で俺を眺めた。
「女として、見過ごせる発言ではないわ」
山口あゆみが言った。
「レイプって言ったわね」
「女なんて、しょせんは男にやられるだけの生き物のくせに」
「なにそれ。ふざけないでよ」
山口あゆみがいきり立つのを、夏樹沙耶が制止して、 「あら?それじゃ、わたしのことも、後で強姦するとでもいうの?」
余裕たっぷりに笑った。
俺は、内心の動揺を見抜かれていると思った。
「ああ、やってやるさ。ここにいる全員、家を突き止めて、順番に犯してやるから楽しみにしていろ」
「ほうらね。これが、この男の正体なのよ」
夏樹沙耶が言った。
「みんな、今のセリフ、聞いたわね!」
女たちがいっせいにうなずいた。
「できるもんなら、やってごらんなさいよ!」
「その前に、私たちの手で、二度とセックスできないようにしてやるわ」
同僚の澤井みつほがぽつりと、「彼とのセックスは、常に無理やりでした」と言った。
「ふざけんな、みつほ!!お前だって、“無理やりぽくがイイ”って、さんざん愉しんだだろ!!」
「やめて!!」
泣きながら、澤井みつほが言った。
「おれのチンポくわえたくせに・・」
「もう、おやめなさい」
女たちの最年長であるらしい今瀬梨津子が威厳のある声で制止した。
「ふざけんな、みつほ」
俺がさらに言おうとすると、今瀬梨津子は夏樹沙耶から火のついたタバコを受け取り、じゅっと俺の頬に押しつけた。
「ぎゃっ!!!」
わずかに肉の焼ける匂いがした。俺は激痛のあまりロープで吊り下げられた身体をぎしぎし揺らした。
「あなたのお考えは、ようく分かったわ」
今瀬梨津子が俺の顔をじっと見つめて言った。
「ようするに、女性蔑視の男根主義者ってわけね」
「だまれ!」
俺は叫んだ。
「男の顔に、たばこ押しつけやがって」
「あんたみたいなのは、少し痛い思いをしないと、分らないだろ」
と、今瀬梨津子。
「女が無理やりでよろこぶだなんて、アダルトビデオの見過ぎなんだよ」
俺が澤井みつほを睨みつけ、またなにか言おうとする気配を察知すると、今瀬梨津子はたばこをもう一度、今度は俺の目に近づけた。
「よ、よせ!」
「言っとくけど、わたしたちは本気だからね。そんな風になめた態度だと、どういう目に遭うかわからないよ」
今瀬梨津子が、ぎらりと眼を光らせた。
